サウジアラビアは「巡礼の国」という印象を超え、近年は観光ビザの解禁と大型開発で、歴史遺産・砂漠・リゾート・都市エンタメが一気に揃う旅行先になりました。ここでは日本人が行きやすい主要スポットを、行き方、費用感、注意点まで含めて網羅します。

まず渡航準備。日本国籍は観光eVisaが基本で、オンライン申請→決済→メールで発給の流れです。費用は保険込みで概ね500〜600SAR前後(時期で変動)。入国はリヤド(RUH)かジェッダ(JED)が動線を作りやすく、国内移動は飛行機+配車アプリ(Uber/Careem)が現実的です。服装は外国人にアバヤ義務はありませんが、男女とも肌の露出は控えめ(肩・膝は隠す)だとトラブルが少なく安心。酒類は国内で原則入手不可で、持ち込みも禁止。金曜は礼拝の時間帯に一部店舗が休止することがあるため、移動や食事は余裕を持たせましょう。

1)NEOM(未来都市プロジェクト:THE LINE/トロジェナ/訪問可否)
NEOMは北西部タブーク州で進む国家級プロジェクト群の総称です。現時点で「THE LINE(直線都市)」は建設進行中で、一般観光として中に入って見学する形は基本的に想定されていません。現地に行っても“工事エリア”が中心で、許可なく近づくのは避けるのが無難です。将来的にビジターセンターや展望施設が整備される可能性はありますが、旅行計画は「今すぐ行って完成都市を観光する」ではなく、「周辺のタブーク観光+開発の空気を感じる」くらいが現実的です。
トロジェナ(Trojena)は山岳・湖・スキーを掲げるリゾート計画で、こちらも開発途上。現段階で宿泊や一般入場が常時可能な形ではないため、公式発表で「一般向けの予約開始」や「イベント開催」が出たタイミングに合わせるのが安全です。
アクセスの拠点はタブーク(Tabuk)。リヤドやジェッダから国内線で約2時間前後、航空券は需要次第ですが片道300〜800SAR程度が目安。タブーク市内から先はレンタカーまたは手配車が必要で、砂漠・山岳エリアは携帯電波が弱い場所もあるため、日帰りでも水・充電・現金少額を準備し、夜間移動は避けましょう。

2)AlUla遺跡(ヘグラ:UNESCO世界遺産/アクセス)
アルウラ(AlUla)はサウジ観光の“本命”と言える遺跡と砂岩の奇岩地帯が集まる地域で、ヘグラ遺跡(Hegra/マダイン・サーレハ)はサウジ初のUNESCO世界遺産。ナバテア人の岩窟墓群が砂漠に点在し、ペトラ遺跡に通じる文化圏を感じられます。
重要ポイントは「自由に歩き回るのではなく、基本はツアー枠で入場する」こと。遺跡保護のため、入場は指定の集合場所からシャトル移動+ガイド同行の形が多く、事前予約が推奨です。料金は体験内容で変わりますが、遺跡見学は100〜200SAR台から、サンセットや特別プログラムは上がるイメージ。繁忙期(冬〜春)は完売もあるので、航空券を取ったら早めに枠を確保しましょう。
アクセスは2通り。A)アルウラ空港(ULH)へ国内線で直行(リヤド/ジェッダなどから季節運航含む)。B)メディナ(MED)経由で陸路移動。メディナからアルウラは車で約3.5〜4.5時間で、手配車は片道600〜1200SAR程度が目安(車種・人数で変動)。アルウラでは配車アプリが使いにくい場面があるため、宿泊先の送迎や現地ツアーの移動込みプランを選ぶと安心です。宿は高級リゾートからゲストハウスまで幅広いですが、冬季は高騰しやすいので早期予約が有利。砂漠は昼夜の寒暖差が大きく、冬は夜に一桁台まで下がることもあるため防寒を。

3)紅海リゾート(アマラ・プロジェクト/ダイビング)
サウジの紅海沿岸は、透明度の高い海と手つかずのリーフが魅力で、今後は高級リゾート開発が本格化します。アマラ(Amaala)などのプロジェクトは段階的開業で、エリアによってはまだ工事・準備中。旅行者としては「既に運用している紅海沿岸の都市・リゾートを拠点に、日帰りダイビングやボートツアーを組む」方が確実です。
ダイビングは、ポイントのコンディションが良い時期(風・海況)を狙うのが重要。一般的に紅海は通年潜れますが、真夏は暑さが厳しいため、快適さ重視なら秋〜春が人気。体験ダイビングは300〜600SAR程度、ファンダイブ(2ボート)で500〜900SAR程度が目安(器材レンタル込みか要確認)。保険はダイビング対応の海外旅行保険にし、既往症や減圧症対応の条件も確認してください。服装は日差し対策が必須で、ラッシュガード・帽子・サングラス・日焼け止め(リーフに配慮したもの)があると快適です。

4)ディルイーヤ(サウド家発祥の地/歴史地区)
リヤド近郊のディルイーヤ(Diriyah)はサウド家発祥の地として知られ、泥レンガ建築の歴史地区(アット・トゥライフ地区)がUNESCO世界遺産。リヤド中心部から車で20〜40分ほどで、半日観光に最適です。入場は時間指定のチケット制になることがあり、週末やイベント時は混雑するため事前購入が安心。料金は時期・区画で変わりますが、数十〜100SAR台が目安。日中は日差しが強いので、夕方〜夜のライトアップ時間帯が歩きやすく写真も映えます。敷地が広いので歩きやすい靴、飲料水、身分証(パスポートコピーでも)を携行しましょう。

5)ジェッダ歴史地区(アル・バラド:UNESCO世界遺産)
紅海の港町ジェッダは、近代的な海沿いのコーニッシュと、歴史地区アル・バラド(Al-Balad)の対比が魅力。アル・バラドはUNESCO世界遺産で、珊瑚石の伝統家屋、細い路地、市場の活気が残ります。治安面は比較的落ち着いていますが、スリ対策として貴重品は分散し、夜の路地は人通りの多い通りを選ぶのが基本。歩いて回れる一方、暑い季節は体力を消耗するため、午前か夕方以降に訪れるのがおすすめです。入場料はエリア全体としては不要なことが多いものの、博物館や公開邸宅は有料の場合あり(数十SAR程度)。写真撮影は基本可能ですが、人物のアップ撮影は相手の同意を取るのが無難です。

6)エンタメ施設(ブールバード・リヤド/シックスフラッグス計画)
リヤドは近年エンタメ都市化が進み、旅行者が「夜に何をするか」で選びやすい街になっています。代表がブールバード・リヤド(Boulevard Riyadh City)周辺で、レストラン、カフェ、ショー、季節イベントが集結。入場がチケット制の日や、イベントごとに料金が分かれることもあるため、現地の公式案内で当日の価格と入場条件を確認を。食事は20〜80SAR程度のカジュアルから、100SAR超の店まで幅広く、週末夜は混むので早めの入店が安心です。
シックスフラッグス(Six Flags)計画はサウジで複数計画が報じられてきましたが、開業時期や内容は変更されやすい分野です。「行けば必ず入れる完成テーマパーク」として旅程に固定せず、渡航直前に公式発表・現地ニュースで稼働状況を確認し、代替案(ブールバード地区、博物館、砂漠ツアー)も用意すると失敗しません。

モデルルート例(7日間)
1-2日目:リヤド到着→ディルイーヤ+ブールバード夜遊び
3-5日目:国内線でアルウラ→ヘグラ遺跡+奇岩スポット(予約制ツアー中心)
6-7日目:ジェッダへ移動→アル・バラド散策+紅海コーニッシュ(時間があればダイビングを追加)

最後に、現地で困りがちな実務。支払いはカードが強い一方、地方は現金が役立つ場面もあるので少額のSARを用意。配車は空港・都市部で便利ですが、地方は送迎付きツアーが安全確実。通信は空港でSIM/eSIMを手配すると地図と配車が安定します。宗教施設や礼拝時間への配慮、公共の場での節度ある服装と振る舞いを守れば、サウジは想像以上に旅行しやすい国です。大型プロジェクト(NEOMやアマラ)は「今見られるもの/まだ見られないもの」を切り分け、確実に体験できる世界遺産(アルウラ、ディルイーヤ、アル・バラド)と組み合わせるのが、満足度の高い旅の作り方です。